学生による茨城観光・生活紹介

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文化に適応するって何だろう?

記事を書いた人:篠﨑 凜 (シノザキ リン)
インタビュワー: Fatimah Sekar Aurum、篠﨑 凜

私たちは、2015年から2016年の2年間、水戸キャンパスの国際交流会館でチューターを務めていた、茨大卒業生の渡邊悠(ワタナベ ハルカ)さんに、当時の体験談やチューターをするうえで大切なことなどを伺いました。渡邊さんは現在、フィリピンで働いています。

ファティマ、シノザキ: 本日はよろしくお願いします。
ワタナベ:よろしくお願いします。
ファティマ:ワタナベさんは、大学生の頃に留学生をサポートしていたんですね?
ワタナベ:はい、そうですよ。
ファティマ:サポートをすることの良さってなんでしょうか。

渡邊さんは、自分がチューターになったきっかけも含めて答えてくれました。

ワタナベ:大学生の頃、本当は海外に留学に行きたかったです。でも、経済的に難しかって……。その一方で、友人は留学のためにどんどん海外に飛び立っていったので、とても自分自身にがっかりしました。そんな時、中華系マレーシア人の先輩が、チューターのプログラムに誘ってくれたんです。それで留学生をサポートすることになりました。

サポートすることの良さについては、

ワタナベ:留学生をサポートする上での「良さ」は、英語は人とコミュニケーションをとるための道具にすぎないと気付けたことですかね。英語が上手に話せるかどうかということよりも、海外にルーツを持つ留学生のことを理解する姿勢の方が大切だと思います。これ、答えになっているかな(笑)。
シノザキ:なってますよ!
ワタナベ:私は当時、会館(茨城大学の施設で、留学生のための寮)で2年間生活してかれらのサポートをしていました。そこでたくさんの留学生と友人になったんです。そのなかで気付いたのは、やはり英語が使えるかどうかなんて大して気にする必要はないということです。日本人学生と留学生が、お互いを理解しあうことの方が重要なんです。
シノザキ:コミュニケーションで理解しあうことが一番大切で、そのために英語を使うという感じですね。チューターは貴重な体験になるんですね。
ワタナベ:そうですね。

シノザキ:チューターになって苦労したことや大変だったことはありましたか?
ワタナベ:文化の違いに慣れることですかね。英語を話すことで困ったことは特にありませんでした。私がチューターとして活動していた頃、よくイベントやパーティーを計画していたのですが、それについても特に困ったことはありませんでした。でも……、日本以外の国から来る学生のなかには、文化や考え方の違いが理由で時間にルーズな人がいますね? その一方で、日本人は時間をまもることに厳しくなりがちです。例えば、よく日本では5分前行動とか言われますよね。
シノザキ>:そうですね。
ワタナベ:でも、ベトナム人やマレーシア人、アメリカ人など、他の国や地域の人々はそれぞれ独自の時間をもっています。だから、14時頃を集合時間にしたら、留学生全員が必ずしもその時間より早く来たり、ちょうどに来たりするわけではないんです。30分過ぎとかに来る人もいます。チューターを始めて最初のころは、その時間感覚の違いに驚きました。「どうして時間通りに集まらないんだろう」って。でも、この時間感覚は相手が持つ文化なんです。だから、その文化とうまくつきあっていく必要があります。私は、集合時間を来てほしい時間よりも早い時間に設定することにしました。

渡邊さんは、他にも文化の違いに驚いたエピソードを教えてくれました。

ワタナベ:それから、当時の留学生は日本語の「大丈夫」という言葉に困惑していました。「夜ごはん一緒に食べよう」と留学生に誘われたとき、私は「大丈夫だよ」と返したことがあります。そうすると留学生の友人は「その『大丈夫』ってどんな意味よ? YES/NOどっちなの?」と言ってきました。そのことで、もめたこともありました(笑)。
シノザキ:確かに、「大丈夫」はよく言っちゃいます(笑)。
ファティマ:まさに文化の違いですね。 
ワタナベ:それに、人との距離感も文化によって違いますね。
ファティマとシノザキ:ああ~。
ワタナベ:日本人のパーソナルスペースは広い傾向にありますよね。たとえ親しい人であっても、その人との距離を保つ人もいます。
ファティマ:プライバシーみたいなものですね。
ワタナベ:そうですね、プライバシーでもありますね。会館にいたころ、ある留学生が何も言わずに私の部屋に入ってきて、食べ物を取っていったことがあったんです。「なにしてんの!私の食べ物なのに!」と、その時は思いました(笑)。でもその留学生はお腹がすいていたのもあるし、そういう距離感をもっているんです。
シノザキ:そういった距離感のずれがあることは、留学生の方に伝えたんですか?
ワタナベ:伝えましたね。「部屋に入るときはノックしてほしい」とか。でも、私が彼らの持つ文化や感覚に慣れていきました。
シノザキ:わあ。
ファティマ:それはすごいですね!
ワタナベ:こんな感じで、最初は文化の違いにショックを受けたけど、段々慣れていきました。

シノザキ:そういえば、渡邊さんはチューターを務めていた頃にイベントを企画したとおっしゃっていましたね。そのときに気を付けていたことはありますか。
ワタナベ:さっきも言った通り、集合時間を決めるときに工夫をしていたことですかね。
シノザキ:イベントの内容は日本にまつわるものだったのですか?
ワタナベ:そうですね。ああ、でもムスリムの学生がいたので、イベントで提供する食べ物は配慮していました。その他にも、いろいろな宗教ごとに食べることのできない食材があるので、そこは常に気にしていました。なので、イベントで食べ物を提供するときはいつでも料理の具材を確認して、わかりやすいようにカードを作っていました。「これはハラルフードです」とかね。
シノザキ:チューターになったら、文化や宗教について学ぶ必要がありますね。
ワタナベ:そうですね。あと、私は「平等、公平」という理念をもっています。その理念に基づいて会館のみんなと接していました。
ファティマ:みんな同じですよね。
シノザキ:みんな友達、仲間という意識は大切ですよね。
ワタナベ:そうですね。

Comment from writers:

渡邊さんのお話を聞いて、チューターになるということは、文化や宗教、異なる価値観に触れ、学ぶことでもあるのだなと感じました。渡邊さんは現在、日本から離れた地でお仕事をされています。チューターで培った異文化に適応する力が、役に立っているのではないのでしょうか。