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留学体験・協定校情報

「おい!後ろを見ていてくれと言っただろう!!」

工学部 メディア通信工学科 

留学期間2012年度研修参加

 オーストラリアでの生活を通して、日本でのそれと比較したかった。これが、私がシドニーを訪問した理由です。約三週間の滞在では、事前に予想していたこと、していなかったことを含め、多くのことを経験しました。すべてのことをここに書ききれないため、体験したことの中で特に印象に残ったことを3つ書きます。

現地の友人が本当に伝えたかったこと

 UTS(大学名)に通う学生で、特に仲良くなった友達がいた。ある日、彼が日本食のレストランに行こうと私を誘ってくれた。レストランに向かう途中、彼は「手持ちが少ないのでATMで引き出したい」と言った。私たちは近くのATMに立ち寄った。シドニー市街には建物の内外に関わらず多くのATMがあった。彼は言った。「俺が引き出している間、後ろを見ていてくれ」私は了解し、思った。(暗証番号を知られないようにするためか。まあ、当たり前か)後ろを向いているよりは、その場から少し離れたほうが彼に安心感を与えるだろうと考えた私は、遠くからタッチパネルを操作する彼を見つめていた。少しして、彼はそばに私がいないことに気がつくと、サッと周囲に目を走らせ、大きな声で私を呼んだ。「おい!後ろを見ていてくれと言っただろう!!無責任だな!」私が彼の言葉の真意に気づいたのは、間もなくのことだった。

加速度的に温まる広場

 現地の学生たちと一緒に、公園で昼食をとろうということになった。"SUBWAY"というサンドウィッチを扱う店でそれぞれが好きなものを選んだのち、公園内を歩きながら座れる場所を探していた。いい感じのベンチがいくつかあった。大きな道の両側に、ベンチがいくつもならんでいた。グループは6人、ベンチは一脚につき3人しか座れなさそうだった。適当に3対3に別れ、隣同士のベンチに座ってサンドウィッチを食べた。facebookの記事の話で盛り上がっていると、隣のベンチから声が飛んできた。「おい、Shutoのも味見させてくれよ!」私は立ち上がって自分のを隣のベンチに持っていこうとした。すると「来なくていい!投げてくれ!」と友人。一瞬戸惑ったが、包み紙でパンを軽く包み、投げた。5mほど宙を浮いたパンを、彼は上手にキャッチした。途端に、向かい側のベンチから歓声があがった。「Yeah, great job!!」先ほどまで人目を憚らずにいちゃついていたカップルがこちらのやり取りに拍手をしていた。調子に乗った友人は大げさにガッツポーズをした。すると、彼と一緒のベンチに座っていた友人たちも声を上げ、ハイタッチを交わし始めた。このノリがよくわからなかったが、とりあえず彼の元に「Man, give me five!!」と手を差し出しに行った。ところで、私のパンが戻ってくることはなかった。勢いに便乗して誰かが食べたらしい。誰だよ。

ソーセージをとらない学生たち

 大学の中庭でBBQ大会が行われた。といってもそれほど規模が大きいものではなく、運営は学生たちで、無料のソーセージやパン、ジュースなどを配るというものだった。さて、私がBBQ開催の情報を聞き、中庭についた頃にはすでに長蛇の列ができていた。並んでいると運営の学生が紙皿とナプキンを渡しに来てくれた。ソーセージを焼くテントに近づくにつれて、おいしそうな匂いが漂ってきた。まさに自分の番になろうとしていたとき、私の前に並んでいた学生たちが、ソーセージを取らずにパンだけ取り、そのままどこかへ行ってしまった。彼らは一人としてソーセージを取ることはなかった。私がポカーンと間抜けな顔をしていると、友人が割って入ってきた。「宗教がらみだろうね。あんなに美味しそうなソーセージなのに、彼らは食べたいと思わないのか。ストレスが溜まらないのか。俺には不思議でならないよ」自分たちの分のソーセージをもらい、私たちは近くの芝生に腰掛けた。友人は夢中にソーセージにかぶりついていた。私はソーセージを食べながら、物思いに耽っていた。ここに住む人たちは、皆がちがうものを食べ、皆がちがうものを信仰し、皆がちがう生活様式を送っている。そんな彼らが、お互いのことを理解し合えるのだろうか。受け入れられるのだろうか。シドニーの澄み渡った青空を眺めながら、私はそんなことを考えていた。ソーセージを食べ終えた私たちは、rubbish binに紙皿を捨てに行った。その途中で、地面に腰を降ろし美味しそうにパンを頬張る彼らを見た。彼らには、日本の”給食”がどのように映るのだろうか。訊いてみたかった。

 我が国は、総人口の約98.5%が日本人で占められています。他の国とちがって独自色の濃い文化が根付くという利点はありますが、逆に異文化交流の機会は少なく、これは欠点であると思います。一人一人がコンピュータを持つ時代になり、世界は小さくなりましたが、逆に一人一人の世界は大きくなりました。異文化を理解し、広い視野を持っていなければ、これからの時代、大きな問題を引き起こしかねないでしょう。"暗黙の了解"がもはや通用しない時代です。

 海外に赴くことは異文化理解に有用であると思います。それは留学であってもいいし、観光であってもいい。本やインターネットで海外のことを調べるだけではなく、現地の空気に実際に触れて、感じて、考えて、理解しようとするプロセスが大事だと思います。シドニーでは、事前に予想していたことよりも、予想していなかったことのほうが遥かに起こりました。そして、悪い予感はほぼ間違いなく当たりました(笑)。異文化理解"なんて堅いことを言わずに、みなさんには、気負わずに海外へ行ってきてほしいと思います。良いことも悪いことも含め、あなたにとって新しい世界を体験してほしいということが、私からの願いです。

バス停ダルウィッチ・ヒルにて

セントラルステーション

ボンダイビーチ

大学の中庭 9月11日